シミラン島
ピーピー島

 ノー天気男の哀切

  1993年12月    



シミラン島
プケットのアルカディア・ホテル。
シーフード料理店である。イカがうまい。
「どんなワインがあるのかな?」
日本語だ。タイに来てワイン? 気障なヤツめ。リゾラバ探しに来たのだな。気に食わない。

近くのテーブルの日本語を聞いて、わたしの頬がぴくぴく動く。ロブスターを引きちぎる。冷静になれば、向こう側のテーブルの日本人の方がイケメンで、金持らしく、ジェントルマンらしい。それが余計に気に障る。

気障な日本人がプーケットでガールフレンドとエンジョイするのならば、おいらはシミラン島で水と戯れよう。シミラン島の透明度は高く、水中の魚の写真はほとんどここで撮影されている。

こっちの方が健康的だ。スポーツだ。美しい。ロマンチックだ。




シミラン島到着
翌日、午前9時。
カロン・ビーチで砂浜にポツンと立つ。周囲は中国語が飛び交っている。中国人とわたしを乗せた小型船は沖合に停泊している高速双胴船に向かう。

だがそのかっこいい船の脇を通り抜け、薄汚れた70人乗り位のボートに向かっている。日本人ギャルなんかいないじゃん。中国人ばっか。騒がしい。どうすんのよ。

ボートの脇には日本語で〇〇丸と書かれた文字が白ペンキで消され、ローマ字でシミラン号なんて、気取って書かれている。中国人の甲高い騒ぎの中で、絶望感に陥る。どうしてくれるの。週刊誌。そのうえ、片道3時間要すると。往復、6時間も中国人の喧騒に耐えなければならない。

眠ってしまおう。睡眠薬をあおる。ぐびっつ。
アンダマン海は波静か。だが、船の振動が激しい。眠れやしない。高速艇が波をけたてて追い抜いていく。

向こう側の甲板では日本人ギャルが、こちらの低速船に向かって手を振っている。昨夜のジェントルマンが女性の腰に手を当てている。ペアのシャツだ。おまけに高そうだ。




ピーピー島、ジェームス・ボンド島

 007を撮影した島を訪れるツアーにも参加してみた。



タイに来てまで本を読まなくともいいものを。
すぐ、ポーズをつけたがるのが悪い癖。




●「夢見る楽園」(目次)●
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