インド、シリグリ

シッキムの入域証が取得できなくて!

1994年4月



シリグリ空港に到着

空港の駐車場にて
ヒマラヤ山中のシッキム王国。
1957年にインドに併合され、現在はアメリカ人の女王とその王女が住んでいる。国王、王子たちは事故で不思議な死に方をしている。

現在は、時々新聞をとおして消息が伝えられるだけだ。アメリカ人の女王も一時アメリカに帰国していたが、今はシッキムの首都ガントクにある王宮に住んでいる。

空港にて
「地球の歩き方」でチェックすると、シッキムに入るには「入域証」が必要らしい。根が慎重なワタシはインド大使館に確認の電話を入れた。
「シッキムは我が国の一部です。だからあなたはインドのビザを取得すればいいのです。シッキムのパーミットなどは必要ありません」
インド訛りの英語でまくし立てられた。
「いや日本のガイドブックには必要だと書いてあるんです」
「シッキムは我が国の一部なんですよ。それなのになぜそんな書類が必要なんですか」
怒り始めた。



シリグリ市内
空港でガイドと落ち合った。
「パーミットを取得してきましたよね?」
「いや、必要ないそうじゃありませんか」
「必要です。シッキム政府の出張所に行って,取得しましょう」
午後5時。カルカッタより幾分涼しいが、アスファルトの溶けた臭い、黒煙、クラクションは健在だ。

日曜日の夕方、シッキムの出張所は閉じられている。構内では田舎の乗り合いバスが1台。翌朝7時30分発のシッキム行きだ。1日1便の古ぼけたバス。5時間をかけて、谷をのぼる。
「誰かいればいいですね」
ガイドは期待を持たせる。二人で1時間待ったが、係員は見当たらない。
「所長の家を調べました。行って発行してもらいましょう」
ガイドと小型車で15分ほど走る。門があり、小さな庭は駐車場になっている。4階建てのアパートがある。シッキム政府職員の宿舎らしい。
すでに太陽は沈み、暗くなってきた。街灯もないところだ。





ホテルのガードマン、強そう。
「ちょっと待ってください」
アパートの階段を駆け上ったガイドは闇の中に消えてしまった。30分がすぎた。
「だめだそうです。あなたが直接頼んでみますか?」

ガイド氏がそっとドアを開ける。
裸電球の下で、30歳代後半の女性とその娘がノートを広げている。わたしは卑屈にも腰を屈め、インド大使館にいかに騙されたかを説明した。
「そんな話、わたしには関係ないでしょ」
「でもね、大使館員の言うことを信じないわけにはいかないでしょ。パーミットを出してくださいよう」

ダージリン行きミニトレイン時刻表
そう言いながら、母娘が読んでいるノートを覗き込む。青のボールペンのインクが茶色の紙に染みてべとべとしている。
「シッキムに行きたいと40年間焦がれていました。日程が詰まっていて、今日行かないと永久に訪れることができません。ぜひパーミットを発行してくださいうよぅ」
「だって、今日は日曜の夜でしょ。休息する時間ですよ」
「そこを何とか」
ついに奥の手をだした。ワタシはポケットからドル紙幣を取り出す。ガイドに合図をする。

電柱に張ってあったプロレスのポスター
「やめてください」
ガイドはワタシを隅に引っ張った。
「賄賂はだめです」
ガイドはワタシを引きずって車に戻った。

翌日、昼近くになってやっとパーミットが取れたのだった。







スターTVの影響か、アルティメイテッド・ウォリアー、ドゥーインクなどのWWF人気レスラーの名を使って、インド人レスラーが興行をしている。インドにも世界チャンピオンが存在するのだ。




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